RFPを作らずにベンダー選定した結果、失敗した話

「どこのベンダーに頼めばいいかわからないから、とりあえず知り合いの会社に」——この判断が、プロジェクトを大きく狂わせることがあります。RFPなしのベンダー選定が引き起こした現場の実話をお伝えします。

はじめに:RFPとは何か

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)とは、システム開発や業務委託を外部ベンダーに依頼する際に、発注側が要件・条件・評価基準などをまとめた文書のことです。ベンダーはこのRFPをもとに提案書を作成し、発注側はそれを比較評価してベンダーを選定します。

一見すると「手間のかかる書類仕事」に見えるかもしれません。しかし私が20年以上のITコンサルタント・PM/PMO経験で得た確信があります。それは「RFPを省略したプロジェクトは、ほぼ例外なく問題を抱える」ということです。

実際にあった失敗の話

背景:急ぎのシステムリプレイス

ある通信事業会社から、基幹システムのリプレイスに関するPMO支援の依頼を受けました。プロジェクトはすでに動き始めており、ベンダーも決まっていました。しかし参画してすぐ、違和感を覚えました。

「ベンダーをどのように選定されたのですか?」と担当者に聞くと、こんな答えが返ってきました。「以前からお付き合いのある会社で、話が早かったので」——RFPはありませんでした。

問題が噴出した現場

プロジェクトが進むにつれ、次々と問題が表面化しました。

  • 要件が口頭合意のみで、ベンダーと発注側の認識に大きなズレがあった

  • 価格の根拠が不明確で、追加費用の交渉が常に発注側に不利な状況になった

  • 他のベンダーへの比較検討が行われていないため、本当にこのベンダーが適切なのか誰も答えられなかった

  • 契約範囲があいまいで、「これはスコープ外です」と言われるたびに追加費用が発生した

▲ RFPあり・なしでのプロジェクト結果比較

なぜRFPは必要なのか

RFPを作成する最大の目的は「発注側の要件と評価基準を明文化すること」です。これにより、以下の効果が生まれます。

  • 複数ベンダーを公平な基準で比較できる

  • 要件の曖昧さを事前に排除できる

  • 価格の根拠が明確になり、交渉が対等になる

  • 後から「言った・言わない」のトラブルを防げる

某通信事業会社のPMO案件では、私がRFPの作成を支援しました。ユーザー部門から「改善してほしいポイント」「新規に必要な機能」「不要な機能」をひとつひとつヒアリングし、それを丁寧にRFPへ落とし込んでいきました。この作業が、後のベンダー選定と交渉の基盤となりました。

▲ 適切なベンダー選定プロセス

RFP作成で押さえるべき5つのポイント

  1. プロジェクトの目的・背景を明記する(なぜリプレイスするのか)

  2. 現状の課題と解決したい問題を具体的に列挙する

  3. 必須要件とあれば嬉しい要件を分けて記載する

  4. 評価基準と重み付けを事前に決めておく

  5. 納期・予算の上限を明示する(ただし予算は「目安」として提示するのもひとつの方法)

📌 ポイント:RFPは完璧なものでなくて構いません。「発注側が何を求めているか」を言語化することそのものが、プロジェクト成功の第一歩です。

まとめ

「急いでいるからRFPを省略する」という判断は、長期的には必ずしっぺ返しが来ます。RFPの作成に時間をかけることは、プロジェクト全体のリスクを大幅に減らすための先行投資です。

もしRFPの作り方がわからない、あるいはベンダー選定をどう進めればよいか悩んでいる方は、PMO・ITコンサルタントへの早期相談をおすすめします。適切な支援によって、多くの失敗は未然に防ぐことができます。

著者:山本祐真 | 千代田総合コンサルティング株式会社 代表取締役 ITコンサルタント・PMO・マーケティングコンサルタント|IT経験20年以上